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別紙・1

公立病院として今後果たすべき役割 (詳細)

病院設立の趣旨と目的

山梨県の南部にある身延町と早川町は南アルプスと毛無山山群、富士川と早川とがつくる山岳地帯に存在する。現在の人口は身延町が約16,000人、早川町が約1,500人で、高齢化率は身延町が37.4%、早川町が48%である。 55年前の病院設立時には現在の早川町と身延町北部には少数の診療所のみが存在するだけで、この地域に入院施設を持った病院を設立することが官民の一致した願いであり、現在の飯富病院の開設の趣旨であり目的だった。
当初より、広い無医地区の医療の確保のために出張診療所が設置され、定期的な医療スタッフの派遣と、在宅への往診が行われていた。これらの病院外での医療活動はその後も継続され、現在は無医地区の出張診療所は 12か所となり、住民と共にあるという飯富病院の基本的理念を象徴するものであり、将来に変わることなく引き継がれるものとなっている。

1.地域包括ケアの実践

設立以来の無医地区への出張診療と在宅医療に象徴された地域医療、地域福祉、地域保健を地域住民、行政関連する医療福祉機関と協力し、主導的に包括的に実践することが飯富病院の現在の特色であり今後の役割である。
住民と共にあるとは、飯富病院を主体とした医療福祉機関に所属する構成員は住民と同じ地平に立ち、同じ言葉で考え、話し、医療福祉の専門職とし研鑚し、実践することである。
そのような基本的立場と視点を持つことができれば、救急、急病を含めた緊急事態から、通常の外来診療、入院診療はもとより、在宅のターミナルケアに至るまでを、行政や民間の福祉機関と緊密に協力し、あるいは一体となって対応できる体制が確立できるし、現在もその様に行っている。

2.災害拠点病院としての役割

近い将来発生する東海地震は身延町、早川町に甚大な被害を発生させるとされている。飯富病院所在地での予想震度は7弱である。身延町南部周辺では震源に近いため、さらに大きな被害発生が予測されている。これらの地域では、日常的な救急を含めた医療の多くが静岡県の医療施設に依存している。
地震災害発生時にはこのような静岡県への依存体制が長期に破綻することや、管内の交通網の寸断が予想されるわけであるから、中部横断道の早期の完成を含めた総合的な対策が要求される。災害拠点病院として、災害時でも通常の病院機能を維持するために多方面に準備をしてきた。
(1)自家発電所の建設。
  電力の供給が途絶えても自力で、通常の消費電力の70%を供給できる発電所を建設した。
(2)清潔な水の確保。
  常時40トンの水を確保している。災害時には自動的に緊急遮断されるシステムとなっている。
  また、病院の前庭には水洗トイレなどの中水道用に500トンの水を貯蓄している。
(3)非常用の食料と水の確保。
  病院、ケアホームの患者、利用者と家族、職員、救急要員を想定し、
  300名3日分2700食を備蓄してある。
  医薬品の備蓄も3日間を目安に確保している。
(4)非常事態発生時のマンパワーの確保。
  当院の周辺に医師在宅6棟と職員宿舎1棟(6人全て個室)を建設し、災害発生時、
  医療専門職が歩いて通える体制にある

3.地域医療・ケアを実践できる人材の育成

現在発生している医療危機の最大の原因は医師の不十分な量的、質的育成の結果によるものと考える。量とは医師の全体数のことで、ここではふれない。質的な問題とは、医師の多くを臓器別、疾患別の専門医として育成してしまったことである。もちろん、産科や小児科専門医不足は大問題だが、多くの中小病院で不足しているのは、どのような疾患や病態、さらには福祉の問題にも対応することのできる総合医、プライマリーケア医である。地域医療・ケアを実践できる医師が不足しているのである。
幸いなことに、飯富病院では常勤医師が自治医大出身医師で占められているため、限られた臓器や疾患しか診ようとしない医師は少なく、結果として地域医療・ケアを実践できる機関となることができた。このような経験と実績を生かし、中小病院や診療所で必要な総合医、プライマリーケア医養成に協力していきたい。

4.過疎地域での職場の確保に貢献

多くの過疎地域で雇用の場として最後に残るのは役場などの行政機関と医療福祉機関である。身延町、早川町でもその例に漏れない。病院や福祉施設が発展し、雇用数を増加させることで、地域の人口維持につながりさらに病院、福祉機関周囲に様々なサービス産業が開設される。飯富病院の周囲にもショッピングセンターができ、新しい町が出来上がりつつある。
地域住民が誇りにするような医療機関に成長することで過疎化という大きな波を押し戻すことはできないだろうか。
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